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入院時の栄養アセスメント【栄養評価】

入院患者さんの栄養アセスメント、自己流でアレンジしてきたけど、これでいいのかな、もっと良くしたい。他の施設の人はどうしているんだろうな?

こんな向上心が高い栄養士向けの記事です。

本記事を書いている都(みやこ)は栄養士歴10年以上で、今は病棟栄養管理を中心に仕事をしています。私が普段実践している方法+αを記載しますので、明日からの栄養アセスメントを高めるヒントにして下さい

目次

入院理由・併存疾患など

主訴

患者さんからの主訴ですね。SOAP形式のSです。ベッドサイドにて患者さんから得られた情報ですね。栄養に関わる事項は拾ってカルテ記載したい

関連記事(栄養アセスメントの情報収集をする【聞き取り・ベッドサイド】

現状の問題・入院経過

入院している主たる理由です。疾患・症状など。これが解消されると退院することになるので、とても大切

併存疾患・既往歴

併存疾患は入院の理由では無いが、入院する理由の下地になった疾患や、慢性疾患ですね。既往歴は過去に患って治癒した疾患、栄養に影響のある疾患は必要栄養量の設定に左右されるので注意

栄養状態に影響する事項

栄養スクリーニングの結果

栄養スクリーニングの結果を書きます。施設によりますが、入院の全患者に対して栄養士が介入することは現状少ないと思います。栄養スクリーニングをし、介入対象となった患者さんに対してこのアセスメントを行っているとは思いますが…

入院前の栄養

どれくらい食べていたか等の食習慣・最近の体重推移などを聞き取ります。急な低栄養か、何年も低栄養か。別施設からの入院の場合は紹介状やサマリをチェック

年齢・性別・身体所見・体格

身長・体重・BMI・標準体重(IBW)、普段の体重(UBW)、出来れば握力・TSF・MAC・体組成など。正常ではない所見(腹水・浮腫など)

検査所見

検体検査(血液、尿、便、etc)、生理機能検査(CTなどの画像検査、呼吸、etc)

摂食嚥下

頚部聴診、EAT10、RSSTなどツールを用いて評価しても良い

口腔

舌の動き、歯の本数、清潔度、義歯の有無など

薬剤

現状の入院理由となった問題に対してか、併存疾患対してか。内服、外用、注射を確認。薬剤を把握することによって逆説的に治療フローで今がどの位置かが分かる。薬物で栄養投与している場合は、重複に注意。

入院前住居

退院した後のフォローはどのように必要かを把握するため。食事内容の把握も併せて情報収集

その他

意識・呼吸・循環・消化器症状・感染・etc…。栄養に影響する項目があればチェックしてカルテ記載

栄養摂取の状況

経口摂取

提供している食事から摂取している栄養量。出来れば、主食と副食を別々に評価

補助食品

補助食品で摂取している栄養量。多種類あれば、品ごとに評価

経腸栄養

評価した日に実行されている経腸栄養の栄養量。投与速度、投与時間など

静脈栄養

評価した日に投与されている静脈栄養の栄養量。静脈的に投与されている薬剤は把握はするが、ここでのカルテ記載は省略

必要栄養量の算出

水、エネルギー、たんぱく質、脂質、できればナトリウム・カリウム、入院理由・併存疾患に関係する栄養素、をEBNに基づいて算出しカルテ記載

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栄養充足率

算出した必要栄養量に対して、評価した日およびその数日前からの摂取栄養が満たせているかを評価。カルテには%記載にすると他の職種が理解しやすい

栄養評価とリスク

栄養評価

今まで得てきた情報を踏まえて、栄養不良の有(低栄養or過栄養)、無を判定する。さらに下記について評価しカルテ記載

  • 摂取量不足の有無。期間(短期間の不足か、長期か)
  • 体重減少の有無。減少率と減り始めた期間(短期か中長期か)
  • 侵襲の有無。侵襲があれば程度も。侵襲とは感染や手術、外傷など
  • 慢性炎症の有無。担がんやリウマチなど
  • 代謝性疾患の有無。糖尿など
リスク

栄養状態に今後影響を与える項目を記載する(たん癌、長期消化管不使用など)

今後の計画・介入方法

栄養介入の行った栄養評価をもとに病態・今後の治療の見通し・患者さんのゴールを合わせて栄養介入を行います。

栄養介入はこのカルテ文章を読んだだけで医師が実行できるよう、具体的に記載する(ONSを追加する、どんな静脈栄養の併用するか、経腸栄養のプランなど)

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実際例

主訴 

1か月前から嘔気・嘔吐が続き、食べられなくなった。体がだるい

現状の問題点・入院経過

胃癌手術後に外来にて化学療法を受けていたが、食思不振・倦怠感・脱水にて補液目的にて入院

併存疾患・既往歴

併存疾患:糖尿病

既往歴:20XX年に胃がんstageⅢにて幽門即胃切除(B-Ⅱ再建)、20XX年大腿骨頸部骨折…

栄養スクリーニングの結果

GNRI→スコア79にて重度の低栄養リスク

入院前の栄養状態

手術後、分割食を継続していたが手術前ほどは摂取できてていなかった。化学療法開始後、食欲不振がとくに入院前1週間はほとんど食べられなかった。普通の食事形態を摂取、経口栄養補助食品(ONS)を少量摂取。推定摂取エネルギー800kcal

年齢・性別・身体所見・体格

75歳、男性、身長160cm、体重46kg BMI18、IBW56kg、術前体重51kg、

検査所見

ALB3.7mg/dl、Na129mEq/lなどなど、上部内視鏡検査で器質的な問題なし

摂食嚥下

頚部聴診音問題なし、咽頭挙上問題なし、RSST3回

口腔

舌の動き問題なし、残存歯20本以上、舌苔あり、口腔内乾燥あり

入院前住居

自宅、通常形態の食事、1日5回食

その他

排便は問題なかった、つっかえ感なし、皮膚乾燥あり、

経口摂取

入院後、2日間で胃術後食を主食・副食ともに6割摂取にて1000kcal、たんぱく質36g

補助食品

なし

経腸栄養

なし

静脈栄養

細胞外液(実際には薬剤名)1500ml 0kcal たんぱく質0g

必要栄養量
  •  1150~1600(BW25~35)ml
  • エネルギー 1500(術前体重×30)kcal
  • たんぱく質 61(術前体重×1.2)g
充足率

水100% エネルギー67% たんぱく質59% 

栄養評価

栄養不良あり→低栄養

  • 摂取量不足【有】、入院前からの中長期不足
  • 体重減少【有】、術後からの中長期にわたった体重減少
  • 侵襲【無】
  • 慢性炎症【無】
  • 代謝性疾患【有】
リスク

胃切除後(ダンピング症状)、10%以上の体重減少、嘔気

今後の計画・介入方法

#脱水→ 細胞外液にて補正中

#食思不振・摂取量不足→ 内視鏡で器質的な問題が無く、胃切除後+化学療法副作用による副作用と考える。脱水が補正されれば抹消輸液はアミノ酸・糖・電解質・ビタミンキット(実際には商品名)1000mlへ変更を推奨、在宅でONSは比較的摂取されていた為、〇〇を1p追加推奨、7割以上食事摂取出来れば輸液は終了で良いと考える。

〇月〇日のLabデータと食事摂取フォロー

退院後の継続的な外来栄養指導も考慮下さい。

おしまい

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