この記事を書いている私は現役の病院栄養士ですが、知識の確認するために国試(臨床栄養の領域のみ)の過去問をチェックしました。 その3回目となります
栄養士の卵さんは勉強の足しに。 この記事を読んでおられる現役の栄養士さんは読み物として、気軽に読んで頂ければ幸いです。
✓本記事の内容
第33回管理栄養士国家試験の臨床栄養の分野のみ 5問
過去問は第33回管理栄養士国家試験を参照することにしました。厚生労働省のホームページからの印刷です。解答も同ホームページを参照しました。※厚労省のHPでは公開が終了しています
問題①(国試番号32)
脳血管障害に関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ
ラクナ梗塞は、脳動脈瘤がリスク因子である 一過性脳虚血発作(TIA)は、脳出血の前駆症状である 脳出血は、頭部CTで低吸収領域として示される くも膜下出血は、症状に激烈な頭痛がある 脳塞栓は、症状発現が緩徐である
解答
× × × 〇 ×
解説
× 文章の意味がよく分からないのですが、脳卒中(脳の血管に異常が起きる病気)のリスク因子で確立されているのは高血圧・糖尿病・脂質異常症です。脳動脈瘤は脳の血管にコブが出来る事。 × 前駆症状とは、病気の前触れとして現れる症状。一過性とは短時間出現してすぐ消え去る一時的なこと。脳出血は脳の血管がやぶれる病気なので一過性にはなりにくい。一過性脳虚血発作は脳梗塞の前触れ(前駆症状) × CTはx線を照射し、身体を通過したx線の程度を画像でみており、x線が吸収されると白く映る。x線が途中で吸収される量が違うので白黒の濃淡がその差でつきます。【黒】気体(ガスなど)>液体(血液・腹水など)>組織(脳、内臓、筋肉など)>固体(骨、胆石など)【白】。脳は沢山吸収するので高吸収 〇 くも膜下出血の兆候でバットで後頭部を殴られたくらいの痛みが有名。 × 塞栓とは血液の固まりが血管の中を流れて脳血管に流れて閉塞させるもの(多くは心房細動から出来た血栓が脳へ)いきなり血管が詰まるので突然起きる。緩徐とはゆっくり という意味なので×
設問4.のくも膜下出血の症状が重要なので、それ以外は分からなくても解ける問題です。
国試には必要ありませんが、脳卒中について詳しく学習したい方は脳卒中学会 が無料でガイドラインを公開していますので読んで下さい。栄養の項目もあります
問題②(国試番号33)
腎臓の構造と機能に関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ
原尿は尿細管で生成される 糸球体に流入する血液は、静脈血である アルドステロンは、カリウムの再吸収を促進する バソプレシンは、水の再吸収を促進する 糸球体ろ過量は、腎血流量の約90%である
解答
× × × 〇 ×
解説
× 腎臓の解剖ですね。原尿が作られるのはボーマン嚢 × 糸球体に流入する血液は、動脈血。腎動脈ですね。「流入」と書いてある時点で動脈血になるのではないかな。 × アルドステロンは副腎でつくられ分泌され、ナトリウムをより多く保持し、カリウムをより多く排出するよう腎臓に信号を送るホルモンです。血圧の制御系のホルモンです 〇 バソプレシンは抗利尿ホルモンです。利尿(尿を出すこと)に抗っているホルモンです。腎臓から出る水(尿)を調節することで体の水分を調節しています。 バソプレシンは水の再吸収を促進するので腎臓から排泄される水をへらしているわけです。 × 99%です。糸球体でろ過と尿細管での再吸収で尿がつくられていますが、約200リットルの尿(原尿)が血液からろ過され、その後、尿細管で99%が再吸収されて血液に戻る。残りが尿となります。最終的には約1.5リットルが尿として排出
問題③ (国試番号34)
腎・尿路系疾患に関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ
急激な腎血流量減少は腎前性急性腎不全の原因になる 糖尿病腎症の第4期は、たんぱく尿の出現で判定される 慢性腎不全では低リン血症がみられる 腎代替療法のうち最も多いのは、腎移植である 無尿は透析導入の必須項目である
解答
〇 × × × ×
解説
〇 急性腎不全は腎前性、腎実質、腎後性に分類できます。血液循環と尿の作られ方を理解すると覚えやすい。血液の流れは腎臓に入る前の障害なので「腎前」。ちなみに腎臓のそのものの障害が腎実質 × タンパク尿の検査はとても簡単・コストも安いのでおおざっぱに腎臓が障害されているかに使われます(これだけで腎臓の何が詳細に悪いかは分からないし、腎臓の病気は山ほどある)。糖尿性腎症の進行度合いは詳細にあたります。糖尿病腎症の進行の判定は腎臓病学会のホームページ を参照下さい。 × 腎臓は尿を作り、リンは尿から排泄されますが、慢性腎臓病によりリンの排出能が落ちます。排出が落ちるだめ体の中のリンは貯まるので、低リン血症にはなりにくいです。 × 腎代替療法は腎臓がほとんど働かなくなったので、何かで代わりをする治療方法です。代わりになり得るのは①機械(透析)と②別の人の腎臓(腎移植)です。2017年の透析導入人数は約4万人、同年の腎移植は約400人で透析の方が圧倒的に多いです。腎移植の条件が透析より厳しいためです × 無尿は透析の必須項目ではありません。透析導入の基準は学会ホームぺージ 「維持血液透析ガイドライン:血液透析導入」にあります。とても複雑なので栄養士が覚える必要は無いと思いますが、何を医師がみているかぐらいは知っておいても良いと思います。
問題④ (国試番号35)
内分泌疾患に関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ
原発性アルドステロン症では、高カリウム血症がみられる 甲状腺機能亢進症では、徐脈がみられる ADH不適切分泌症候群(SIADH)では、高ナトリウム血症がみられる 褐色細胞腫では、低血糖がみられる クッシング症候群では、中心性肥満がみられる
解答
× × × × 〇
解説
× アルドステロンは副腎でつくられ分泌されるホルモンで、ナトリウムをより多く保持し、カリウムをより多く排出するよう腎臓に信号を送る働きがあります。原発性アルドステロン症はアルドステロンが過剰の状態となりますので、カリウムをより多く体から排出するため、低カリウム血症となります × 甲状腺機能亢進症は甲状腺が働きすぎている状態です。甲状腺は体内の化学反応が進行する速度(代謝率)を制御するホルモンを分泌しているいます。亢進症は働き過ぎなので脈の動きも早くなります。徐脈は脈の動きが遅くなっている状態 × SIADH(s yndrome of Inappropriate secretion of Antidiuretic Hormone)はADHが過剰に分泌されている状態です。ADHとは抗利尿ホルモン(Anti:抗う、diuretic:利尿、Hormone:ホルモン)の事で尿が出ることを抑えるホルモンです。尿が出ることを過剰に抑えているので体内の水が増えて体液が薄まり体液の中にあるナトリウム濃度が低くなるため、低ナトリウム血症になります。血液検査は体の中のナトリウムの総量を見ていないので低くなる。体の中のナトリウムの総量が少なくなっているわけではないです × 強力なホルモンのカテコールアミンが過剰につくられる病気です。特徴的なのが高血圧です。カテコラミンは昇圧剤に使われるぐらいです。血糖との関係性は探しても見当たりませんでした。 〇 クッシング症候群は副腎のコルチゾールというホルモンが過剰に産生された状態で満月様顔貌や中心性肥満など特徴的な症状です。コルチゾールは肝臓での糖新生、筋肉でのたんぱく質代謝、脂肪組織での代謝に影響を与えています
問題⑤ (国試番号36)
神経疾患に関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ
脚気では、末梢神経の障害がみられる 葉酸欠乏症では、脊髄の変性がみられる レビー小体型認知症の原因は、脳血管障害である アルツハイマー型認知症では、パーキンソン病様症状がみられる パーキンソン病では、錐体路の機能障害がみられる
解答
〇 × × × ×
解説
〇 脚気は慢性的なビタミンB1不足によっておこる病気ですね。抹消とは腕や脚を指します。健康だと膝小僧を「コツン」と叩いたときに反応して足があがりますが、末梢の神経が障害されているので叩いてもあがらない兆候が有名です × 葉酸はDNAやRNAの合成に関与しています。欠乏症で有名なのは巨赤芽球性貧血です。ビタミンB12の欠乏症に脊髄変性があるのでそれとの引っ掛け問題ですね × レビー小体型認知症の原因はわかっていません。認知症は脳血管性とアルツハイマー型認知症など様々あります。それぞれの違いを調べてください。日本神経学会:認知症診療ガイドライン × 文章の問題ですね。アルツハイマー型認知症とパーキンソン病は別です。パーキンソン病でも認知症は発症するようですが。 × 運動神経線維(ニューロン)の遠心性経路で延髄の錐体を通る経路のことを錐体路といい、そこの障害。パーキンソン病の症状で典型的なのは手足が震える、筋肉がこわばる、動きが鈍くなる、身体のバランスがとりにくくなる。
つづく
あわせて読みたい
病院栄養士が国家試験過去問を解く【臨床栄養のみ】vol.4
この記事を書いている私は現役の病院栄養士ですが、知識の確認するために国試(臨床栄養の領域のみ)の過去問をチェックしました。 その4回目となります 栄養士の卵さん...