栄養士の卵さんは勉強の足しに。 この記事を読んでおられる現役の栄養士さんは読み物として
✔本記事の内容
第33回管理栄養士国家試験の臨床栄養の分野のみ
過去問は第33回管理栄養士国家試験を参照することにしました。厚生労働省のホームページからの印刷です。解答も同ホームページを参照しています。
解説は現役管理栄養士の都が行いました
問題番号①(国試番号130)
合併症のない女性の高血圧症患者の栄養管理に関する記述である。誤っているのはどれか。1つ選べ
- 食塩6g/日未満とする
- 魚(魚油)の摂取を推奨する。
- 飽和脂肪酸の摂取を控える。
- カリウムの摂取を制限する。
- エタノールは、10~20ml/日以下とする。
解答
設問が正しい→〇、設問が誤り→×
- 〇
- 〇
- 〇
- ×
- 〇
解説
- 〇 これは有名。塩分の過剰摂取が血圧を上昇させます。ちなみに調味料として使う食塩では無く、食品・料理中に含まれる塩分の総摂取量が6g/日未満
- 〇 高血圧治療ガイドライン2019には明記されていませんが、魚介類を摂取することによって肉の摂取量が減り降圧が得られたという研究報告があります。
- 〇 DASH食(飽和脂肪酸が少ない)で降圧効果がある研究報告がされています。
- × カリウムはナトリウムの血圧上昇に対して、反対に(体内のカリウムが増えるとナトリウムが減る)はたらくのでカリウムの降圧効果が期待できます。ただし、問題は「合併症がない」とされています。カリウム摂取が良くない場合もあるので注意
- 〇 男性20~30ml、女性10~20ml/日以下とされています。ちなみに缶ビール350mlでエタノールは約18ml。
設問2・3はちょっと難易度が高く、4の設問が明らかに誤っているので、それで解く問題ですね。(著作権の関係で直リンクは貼れませんが、「高血圧」「ガイドライン」で検索すれば無料でガイドラインを読める学会のホームページが見つかりますよ)
問題番号②(国試番号131)
微小変化型ネフローゼ症候群に関する記述である。正のはどれか。1つ選べ
- エネルギー摂取量は、20~25kcal/kg標準体重/日とする。
- たんぱく質摂取量は、1.5g/kg標準体重/日とする。
- 浮腫がみられる時の水分摂取量は、前日尿量+500mlとする
- LDL-コレステロール値は、低下する
- ステロイド薬の反応は、微小変化型以外のネフローゼ症候群に比べて悪い。
解答
- ×
- ×
- 〇
- ×
- ×
解説
- × 窒素バランスを保つために35kcal/kg標準体重/日とガイドラインで推奨されています。
- × CKDガイドラインにおいてたんぱく質制限がされているので、腎機能低下=たんぱく質制限が有名。しかし、微小変化型ネフローゼ症候群は厳格なたんぱく質制限は必要なしとされており、1.0g~1.1g/kg標準体重/日とされています
- 〇
- × LDLは上昇します。尿からアルブミンが失われるので、体はどんどんアルブミンを作ります。アルブミンを作るときにLDLも同時に作られるため、高値になります
- × 微小変化型ネフローゼ症候群にステロイドの治療や有効性が高いとされています。
参考サイト:ネフローゼ症候群診療ガイドライン(栄養の項目は重要)
問題番号③(国試番号132)
55歳、女性。身長160cm、体重56kg、BMI21.8kg/m2。血圧150/95mmHg、推算糸球体濾過量(eGFR)93mL/分/1.73m2、尿たんぱく量0.5g/日である。この患者の栄養管理として、食塩は5g/日とした。1日当たりのエネルギー量とたんぱく質量の組み合わせである。正しいのはどれか。1つ選べ。
- エネルギー 1,200kcal/日 - たんぱく質量 60g/日
- エネルギー 1,200kcal/日 - たんぱく質量 80g/日
- エネルギー 1,600kcal/日 - たんぱく質量 45g/日
- エネルギー 1,600kcal/日 - たんぱく質量 60g/日
- エネルギー 2,100kcal/日 - たんぱく質量 45g/日
解答
4.○
解説
糸球体濾過量が記載されているので、腎臓病に対する栄養療法の問題。
- 推算糸球体濾過量(eGFR)93mL/分/1.73m2 → GFR≧90なので、GFRの区分はステージ1(下図参照)
下図より、エネルギーは1400~1960(標準体重×25~35)kcal。この時点で設問の3か4の2択となる。下図ではステージ1のたんぱく質は「過剰な摂取はしない」となっており、制限のかかっていない設問4を選択。設問3のたんぱく質量は0.8g/kgであり、やや制限がかかっている。
参考サイト:エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン 2018
問題番号④(国試番号133番)
63歳、女性。身長155cm、標準体重53kg。週3回の血液透析療法を受けている。ドライウエイト49kg。透析前血清カリウム5.8mEq/L。この患者の1日あたり目標栄養量の組み合わせである。正しいのはどれか。1つ選べ。
選択肢 | エネルギー量 (kcal/kg標準体重/日) | たんぱく質量 (g/kg標準体重/日) | カリウム量 (mg/日) |
1 | 25 | 1.2 | 制限なし |
2 | 30 | 1.0 | 2000mg以下 |
3 | 30 | 1.5 | 1500以下 |
4 | 35 | 0.6 | 2000以下 |
5 | 35 | 1.0 | 制限なし |
解答
2.○
解説
ガイドラインの数値を知っているだけで解ける問題ですね。問題文にはドライウエイトやカリウムの値が記載されていますが、ガイドラインの数値内で栄養量が設定されているのが設問2しかありません。
問題番号⑤(国試番号134)
バセドウ病に関する記述である。正のはどれか。1つ選べ。
- 基礎代謝量が低下する
- 腸管蠕動運動が減弱する
- 血清甲状腺刺激ホルモン(TSH)値が上昇する
- 血清遊離トリヨードサイロニン(FT3)値が上昇する
- 血清総コレステロール値が上昇する
解答
- ×
- ×
- ×
- 〇
- ×
解説
- × バセドウ病(甲状腺機能亢進症)では基礎代謝量が増加します。代謝が増加するので消費エネルギーが増えて体重が減りやすく
- × 腸の蠕動運動は活発になります。これが理由で下痢になりやすい
- × 甲状腺刺激ホルモン(TSH)値は低下します。バセドウ病の診断材料の一つがTSH低値です
- 〇
- × 代謝が亢進しており、コレステロールの代謝も亢進しているので、血清コレステロール値も減ります。
つづく