「花粉症にヨーグルトって良いんでしょ?」「花粉症に効く食べ物・栄養無い?」こんな質問を受けるけど、エビデンスを調べるのは面倒だしなぁ・・・
こんな悩みを抱える栄養士向けに、病院で働く栄養士がPubMedで調べた結果をまとめている記事です
✔本記事の内容
・花粉症に対する栄養のエビデンスまとめ
・病院栄養士としてのまとめ
【言い訳】記事を書いている私は病院で働いるイチ栄養士です 。学者ではありませんので、ガチ勢の方は自身で調べてください。でも、記事を読めば会話の厚みは増えると思います
結論:診療ガイドラインには栄養の項目が無い。単発の文献はあるが指標・アウトカムがバラバラ
花粉症に対する栄養のエビデンスまとめ

エビデンスはPubMedで調べました。キーワードは「hay fever nutrition」です(↑の画像)。161個の文献がひっかかり、今回の主旨に合う研究を目視で選びました。順番に示します
PMID: 20130079
J Nutr, 140 (3), 713S-21S Mar 2010
プロバイオティクスによるアレルギー性疾患の予防と管理についてのレビュー論文です。本文内にはアレルギー性鼻炎に対する文献が8本抽出され、6本の文献が何かメリットがあり、残りの2本が無効とまとめられています。アウトカムにばらつきがあるものの、特定の菌株は患者さんの症状を軽減し、生活の質向上する可能性があるようです。どの程度、生活の質が向上するかは不明です
PMID: 19598302
World J Gastroenterol, 15 (26), 3261-8 2009 Jul 14
子供に対して実施された研究で、特定のプロバイオティクスが、花粉シーズン中のアレルギー性鼻炎を緩和すると結論を出しています。二重盲検のRCTで試験食(?)は食品では無くカプセルを飲んでいるので、栄養の研究かどうか微妙ですが・・・。結果では「プロバイオティクス群では鼻粘膜に好酸球の浸潤がみられた被験者が少なかった」とされているが、アウトカムとなる指標が鼻づまりや鼻水の量やかゆみのの尺度では無く、免疫のパラメータである事に注意
PMID: 23299716
Eur J Clin Nutr, 67 (2), 161-7 Feb 2013
季節性アレルギー性鼻炎に対しての二重盲検・単一施設並行無作為化プラセボ対照臨床試験です。アンケートによる鼻症状スコアが改善していました。免疫サイトカインの様々なパラメーターにも効果が示唆されていました。使われたプロバイオティクス株はB.ラクティス NCC2818(?)で8週間の継続した経口摂取が必要です。ちなみに被験者はこの期間中にヨーグルトなどの発酵乳製品は摂取していません
PMID: 18625073
Nutr J, 7, 20 2008 Jul 14
無作為化二重盲検のクロスオーバーデザイン。20名の小規模なパイロット試験です。使われた栄養補助食品はClearGuardという品で日本では発売されていませんでした。成分としては「スペインニードル粉末(恐らくバイデン種の花の粉末)」「シナモン抽出物」「およびアセロラ抽出物」。鼻症状スケールのスコア(くしゃみ、鼻みず、鼻詰まり、かゆみ)が軽減されています。くしゃみや鼻みずが完全に止まるわけではありません
PMID: 18567763
J Nutr, 138 (7), 1372-6 Jul 2008
過去の横断研究では大豆イソフラボンの高摂取はスギ花粉症を含むアレルギー性鼻炎の低い有病率と関連していることが観察されていいました。アンケートによって調査。この文献ではスギ花粉症と大豆摂取・大豆イソフラボンは関連がありませんでした。
Am J Clin Nutr, 105 (3), 758-767 Mar 2017
PMID: 28228426
二重盲検のRCTです。カプセルにされた菌を朝食・夕食時に摂取して生活の質をみていますね。生活の質とは自宅/職場、レクリエーション活動、睡眠に関する鼻と目の症状です。これがプロバイオティクス群で統計的に改善傾向です。これも気を付けないといけないのはヨーグルトを摂取したわけではなく、カプセルに入った菌を飲んでいる事です。ヨーグルトだと、菌以外にも因子を作ってしまうし、プラセボも二重盲検もむつかしいので科学的な分析は困難だと思います。
PMID: 14616103
Allergy, 58 (12), 1277-84 Dec 2003
食物摂取頻度アンケートを用いた研究ですので、特定の錠剤をのんでいるわけではありません。花粉症リスクに対する脂肪酸とビタミンを検討しています。オレイン酸の高摂取は花粉症と正の関連があり、エイコサペンタエン酸の高摂取は花粉症に負の相関がありました。ベータカロチンの摂取量が多いと花粉症のリスクが高まり、ビタミンEの摂取量の増加が保護因子でした。なにかの食品が特に摂取されていたかは、サマリには示されていませんでした。この情報からはEPAとビタミンEを多く含む食品を意識的にとれば花粉症の対策としては良いかもしれません
Eur J Nutr, 56 (7), 2245-2253 Oct 2017
PMID: 27412706
スギ花粉症の腸内微生物叢の変化がアレルギー性疾患に関連していると言われているので、スギ花粉症患者の糞便サンプルに発酵乳を補充処理して分析しています。血中脂質レベルに有益な効果をもたらす可能性がある様子です。花粉症の症状が軽減されたか調べるというよりは、基礎研究なのでどのようなメカニズムでプロバイオティクスが良いかどうかを検討している文献でしょうか。知識の底上げにはなるのですが、実生活に反映は難しいと思いました。
PLoS One, 11 (2), e0150202 2016 Feb 26 eCollection 2016
PMID: 26919190
韓国の国民栄養調査からの検討です。4〜13歳の若年対象者に対して24時間思い出し法にて栄養のデータを得て、各栄養因子とアレルギー性鼻炎の関連を調べています。高脂肪および低炭水化物食と有意に相関していました。3000人の対象者に対して行われた栄養疫学的では分かっています。メカニズムは分からないので、単純に低脂肪・低炭水化物食にして花粉症対策が出来るとは言い切れませんし、摂取エネルギーを変えないとすると必然と高蛋白質になります
PMID: 24569538
Eur J Clin Nutr, 68 (5), 602-7 May 2014
季節性のアレルギー性鼻炎でヒスタミンH1受容体拮抗薬(ロラタジン)を内服している患者さんが対象です。二重盲検無作為化プラセボ対照試験です。プロバイオティクスはラクトバチルスパラカゼイLP-33という成分です。鼻の症状スコアに差は認められず、目の症状は改善が認められています。試験ではカプセルで摂取されているので、食品といえるかは微妙です。菌の容量が生活で実現可能かは分かりませんでした。ちなみに、ネットで調べると、LP-33は台湾の乳製品飲料で発売されているようです。
PMID: 15940131
J Allergy Clin Immunol, 115 (6), 1176-83 Jun 2005
研究対象は日本人妊婦です。大豆製品・イソフラボンの摂取が多い人がアレルギー性鼻炎の有病率が低下する可能性があります。
気を付けないといけないのは「豆腐、豆腐製品、発酵大豆、ゆで大豆、味噌汁の消費は、アレルギー性鼻炎の有病率とは関係がない」と本文で述べられており、???となります。食べる量が多ければ多いほど有病率が下がればいいのですが、それも無さそうです。
合計11本ありました。日本人が対象となった文献も見られました。一本づつ精査すると勉強になると思います。基礎研究は読むのにひと苦労・・・
合計11本ありました。日本人が対象となった文献も見られました。一本づつ精査すると勉強になると思います。基礎研究は読むのにひと苦労・・・
病院栄養士としてのまとめ

耳鼻科・アレルギー系の診療ガイドラインで季節性アレルギー性鼻炎に対する、栄養・食品を調べましたが項目が見つかりませんでした。ただし、「摂取しない事の推奨」もありません
まとめのまとめ
- 診療ガイドラインに掲載されるほどのコンセンサスが得られた知見は無い
- 単発の報告があり、特定の食品・栄養素・栄養配分が花粉症を緩和するかもしれない
- スペインニードル粉末、シナモン抽出物、アセロラ、大豆製品
- ビタミンE、イソフラボン
- 低炭水化物〇、高脂肪×
- 単発の報告はあるが評価項目がバラバラ

花粉症に効果が期待できる食べ物については、研究は行われているものの、「食べればすぐ治る」や「これさえ食べていれば花粉症にならない」といった食品・栄養素は解明できていないようですね。
おわり