この記事を書いている私は現役の病院栄養士ですが、知識の確認するために国試(臨床栄養の領域のみ)の過去問をチェックしました。
この記事を読んでおられる現役の栄養士さんは読み物として、栄養士の卵さんは勉強の足しに気軽に読んで頂ければと思います。
✔本記事の内容
第33回管理栄養士国家試験の臨床栄養の分野のみ 4問
過去問は第33回管理栄養士国家試験を参照することにしました。厚生労働省のホームページからの印刷です。解答も同ホームページを参照しています。
問題①(国試問番号10)
循環器疾患に関する記述である。正しいのはどれか。2つ選べ
- 喫煙は、くも膜下出血のリスク因子である
- 血清総コレステロール高値は、脳梗塞のリスク因子である
- 脳血管疾患の年齢調整死亡率は女性の方が男性より高い
- 最近の脳血管疾患の年齢調整死亡率は上昇傾向である
- 疾病分類別医科診療医療費は、呼吸器系の疾患より少ない
解答
- 〇
- 〇
- ×
- ×
- ×
解説
- 〇 ” クモ膜下出血をきたす危険因子としては喫煙習慣、高血圧保有、過度の飲酒が あげられ、これらの危険因子を持ち合わせる人では、その改善が望ましい(グ レードA)” 。日本神経治療学会のガイドラインより。たばこは血管に悪さをするので、臓器に悪い。迷ったらたばこは体に悪いとして選択
- 〇 高コレステロール血症は脳梗塞の危険因子であることが報告されている 。日本脳卒中学会ガイドラインより。
- × 脳血管疾患の年齢調整死亡率は女性の方が 低い、平成29年度人口動態統計特殊報告より。【 困ったらこの理屈で回答 】喫煙者数は男性>女性、たばこは体に悪い(血管系・がん系)。
- × 脳血管疾患による「死亡率」は減り続けている。 平成30年(2018)人口動態統計月報年計より。死ななかったらこの統計にはカウントされないので、発症率や介護導入率とは別問題
- × 疾病分類別医科診療医療費( 傷病分類別医科診療医療費?) は病気分類ごとにかかっている医療費が厚労省から示されています。上位にランクインする条件は、患者数が多い・死なない・薬物治療が継続的である等で、循環器系は1位です、よって×。恐らく、高血圧が前述の条件にあっている為です。
問題②(国試問番号12)
わが国の医療制度に関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ。
- 正常な妊娠や分娩に要する費用は、国民医療費に含まれる
- 特定健康診査の費用は、国民医療費に含まれる
- 病院とは、病床数が20床以上の医療施設である
- 無床診療所とは、医師が一人しかいない医療施設である
- 基準病床数とは、各医療機関が備えるべき病床数である
解答
- ×
- ×
- 〇
- ×
- ×
解説
医療制度は基本的にケガや病気に対しての制度。また、医療でいう「床」「病床」とは、入院時に使用するベッドの事。
- × 正常な妊娠や分娩と記載されているので、通常の人の経過であり、医療の対象外(お金の助けは別の制度で対象となる)
- × 特定健康診査は40歳以上の人を対象として健康な人に行うので、医療の対象外
- 〇 ちなみに 19床以下を「診療所」として分類
- × 無床診療所 とは入院のためのベッドを持たない診療所
- × 基準病床数とは、ある地域(医療圏)が備えるべきベッド数
問題③(国試問番号25)
個体の恒常性に関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ
- 過呼吸では、呼吸性アシドーシスがみられる
- アルドステロンの過剰分泌により、代謝性アルカローシスが起きる
- メラトニンは、夜間に分泌が減少する
- 不感蒸泄では、電解質の喪失がみられる
- 食物摂取後は生体における熱産生が抑制される
解答
- ×
- 〇
- ×
- ×
- ×
解説
身体の酸(アシッド)と塩基(アルカリ)は呼吸と腎臓に大きく影響される。呼吸もしくは腎臓で酸・塩基の取り込みと排出を調整している、化学の周期表が役に立つ。
- × 呼吸性アシドーシスは,呼吸数および/または呼吸量の減少(低換気)に起因する二酸化炭素の蓄積(高炭酸ガス血症)。 二酸化炭素は水に溶けると酸性に(炭酸水とか) なる。呼吸が減って二酸化炭素が体にたまり、血液が酸に傾く。問題文は過呼吸なので呼吸が増えている 。
- 〇 ちなみにアルドステロンは副腎でつくられ分泌されるホルモンで、ナトリウムをより多く保持し、カリウムをより多く排出するよう腎臓に信号を送ります。
- × メラトニンは 季節リズムや日リズムの調節作用 をもつホルモン。 明るい光が目から入る事によって分泌は抑制される 、よって日中に分泌が抑制される
- × 不感蒸泄とは汗以外の皮膚および呼気からの水分喪失をいう。不感蒸泄の役割に保湿(特に咽頭とか粘膜の)があるので(保湿は水が主に必要で電解質では無い)
- × 食物を生体で利用するために形を変えて過程があり、そこでエネルギーが必要となるため、熱産生は亢進する。食事誘発性熱産生として有名、食後に体が温かくなるのはこれ
問題④(国試問番号26)
加齢・疾患に伴う変化に関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ
- 褐色細胞腫は、加齢とともに増加する
- リポフスチンの細胞内への沈着は、加齢とともに減少する
- 良性腫瘍は悪性腫瘍と比べて細胞の分化度が低い
- 血管透過性は、炎症の急性期に亢進する
- 肉芽組織は、炎症の急性期に形成される
解答
- ×
- ×
- ×
- 〇
- ×
解説
- × 褐色脂肪細胞は脂肪を分解して熱を発生させる細胞です。脂肪細胞にはいわゆる皮下脂肪や内臓脂肪などの白色脂肪細胞もあります。加齢とともに白色細胞に置き換わるそうです。 褐色細胞腫とお間違え無く。
- × リポフスチンは細胞質内の不飽和脂肪酸の過酸化によりリソソーム内に形成される不溶性色素 (ウィキペディアより)。 心筋などに加齢とともに沈着増加の程度がよく相関していることから老化の形態学的指標の1つとされている
- × 悪性腫瘍(がん)の特徴には①自律性増殖、②浸潤と転移 、③悪液質 がありますが、 細胞分裂を繰り返すうちにさまざまな機能や形態を持つ細胞に変化する事を分化といい、その度合いを分化度というようです。 良性腫瘍は浸潤と転移 、周りからの栄養を奪うことはしませんが、分化度は悪性腫瘍より低くは無い模様
- 〇 血管壁は物質の行き来が出来ますが、炎症の急性期は血管の透過性(行き来する性質)があがるため、普段は血管壁を通れない物質が通過出来るように あり血管外(組織)へ漏れます 。
- × 創傷治癒の過程で生じる血管、線維芽細胞などから構成される組織。組織障害→止血→炎症期→肉芽組織形成→組織成熟→治癒の順番なので、×。
つづく