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経管栄養の下痢対策【栄養士視点】

病棟で栄養管理の仕事に就いたけど、経管栄養の下痢の対策が分からない。こういった病棟での栄養管理初心~初級者の栄養士さん向けの記事です

✔本記事の内容

栄養士視点からの経管栄養の下痢対応(普段の準備、評価、対応方法)

この記事であつかうのは入院患者さんに起こる急性の下痢です。経腸栄養のトラブルシューティングが出来るようになれば病棟で重宝されますので、ぜひ読んで下さい

本記事では液体栄養剤をfeedingチューブで消化管内から投与する栄養法の事を「経管栄養」とします

それでは順番に示していきます

目次

準備(知識・経管栄養が始まる前から)

知識

水様便≠下痢

実際に実臨床では言葉に出さなくても知っておく必要があるのが下痢の定義分類です

下痢の定義は色々ありますが、「糞便中の水分量が200mL/日以上」または「水様便が3回/日以上排泄される場合」が一般的です。日常生活では水様便=下痢としている事も多いので、臨床とは切り分けて考えて下さい

下痢の分類は浸透圧性・滲出性・分泌性・腸管蠕動低下があります。一般的な教科書で解説されていますのでチェック(参考サイト:看護roo!)

経管栄養が始まる前から

担当の患者さんに経管栄養が適応される見通しが立てば、あらかじめ経管栄養に対して下痢が起こりやすい状態かを評価します(実際には全身の評価)

下記が下痢の起こりやすい下地です。他にもあるかも

  • 長期間の絶食
  • feedingチューブ先端の留置場所(胃幽門を越えている)
  • 消化管運動の程度
  • 高齢
  • 栄養状態の低下
  • 腸管浮腫
  • 乳糖不耐性
  • 病気(慢性膵炎、炎症性腸疾患など)
  • 消化管・膵臓などの手術歴
  • 下痢を起こしやすい薬剤

さらに、経管栄養の投与直前にはプランニングした栄養剤の組成(浸透圧・脂質量・食物繊維量・窒素源)・容量・速度によって下痢が起こりやすいか把握できます。

自分が即座に対応できない場合でも、対応法をあらかじめ示しておけばシームレスな対応ができます。

下痢のリスクが高ければ、患者さん自身に見通しをあらかじめ知らせておくのも良いですね。腸管を使う事は消化吸収能、腸管免疫の維持に大切なので、出来る限り腸を使いたいですね

乳糖は入っているか

乳糖はほとんどの栄養剤で入っていないとされていますが、製造過程でごく微量混入する事もあるらしいです。国が定めた量以下であれば0と表記出来るので、「無い」としている企業もあるようです。ただし、乳糖不耐症の症状が出る乳糖量にはほぼ達していないので混入しているかどうかであればYES、症状が出るかは不明(ほぼ出ない)となります。

下痢になった。評価が大切

経管栄養を施行中に「下痢があった」と情報が入ると(あるいは自分で発見)、まずは医療上の問題となるかどうかを考えます。問題なければ様子見でも構いませんが、再評価は行います

:消化管の造影検査後の水様便は一時的なので、問題となる下痢ではありません。よって経腸栄養は継続

経管栄養施行中は日常のような有形便は出にくいです。特に意識のない患者さんであれば、お腹に力を入れられないので。

「医療上問題となる下痢」と評価した場合は、経管栄養が原因か、その他(感染・薬剤等)に原因があるかを下痢の起こりやすい下地を踏まえて検索します。そこで下記の排便状況を確認します

  • いつから
  • どれくらい継続
  • トリガーはあるか
  • 普段の排便
  • 便の頻度・性状・量

下痢のトリガーが何なのかを考える!

薬剤はどこまでみるか

薬の添付文書をもとに下痢を疑うと、ほとんどの薬剤が下痢の原因候補に挙がってしまう。そこで、ソルビトール含有薬剤・消化管運動促進剤・下剤・広域の抗菌薬(カルバペネム系など)が入ってないか程度はチェック

上記以上となると薬剤師さんと協議

また、他職種から連絡があった時点で今までに示した下痢の評価が済んでいるかも確認

経管栄養の対応

「医療上問題がある下痢で、経管栄養が原因である」と評価出来たらあとは原因に応じた対応を行うだけです

前項の評価が終わっていないのに対応はしない方が良いです。

対応手段の例
  • 栄養剤の組成(浸透圧・脂質量・食物繊維量・窒素源)
  • 容量
  • 速度
  • 投与時間(間欠・持続・日中のみ・夜間のみ・休止時間)
  • シンバイオティクス
  • 半固形化
  • 追加水(一回投与量、投与速度、回数)

:投与速度をupしたあとに下痢→速度をもとに戻す

:長期絶食による腸内の細菌変化→整腸剤に食物繊維を併用するシンバイオティクス

対応後に改善すれば評価が適切であったと考えて良いでしょう。改善まで何日モニタリングするかは下痢の原因によるので、対応したときに考えておきます

消化しやすい栄養剤・少量・短時間・低速の投与でも改善しない場合、経管栄養が原因の下痢ではない・難治性の下痢 などを評価の選択肢に挙げましょう

最後に

医療上問題となる下痢かどうか・原因は何か、を担当看護師と協議しましょう。看護師からも色々意見が出てきます。また、思考停止して消化態栄養剤を使う事は、自身と栄養療法への信頼が揺らぐので、適切に評価したいですね

おしまい

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